「頭軽くぶつけただけで大きな怪我はないんだけど

明日一応精密検査してそれからすぐ帰れるから」


「はい」

よかった、大きな怪我がなくて

ほっと息をつくと
真さんはコンビニの袋から缶コーヒーを取り出して開けた。

一口飲むと深く息を吐き出し、天井を見つめる。



「冬ちゃん、隆也のこと、好き?」


「えっ」


いきなりの話題に戸惑いながら
真さんの変わらぬ表情にちゃかしではないとわかり私はぐっと身構えた。



「…はい」


「どれくらい?」


「一番、です」


「はは、そうか、それなら、よかった」



声を押さえながら笑う真さんに
私は少しうつむいた。

静かな病院の廊下は
ちょっとした会話も響いてしまう。



「隆也はね、冬ちゃんのこと本当に好きだよ。

隆也は、冬ちゃんが居ないとダメなんだ。

また、壊れてしまうかもしれない」


「…なんでですか?」


「隆也は、居場所がないんだよ。

家に居ても俺にはあまり学校のこと話してくれないし
隆也の居場所は
冬ちゃんのとこなんだと思う」


「居場所って」


「隆也は、親いないからね」