「で、これからどうするんだ?」
学校を出た私たちは、
並木道を肩を並べて歩いていた。
「そうですね・・・
おなかすきません?」
「あぁ、じゃあどこかで食べるか。」
「はい!」
話を弾ませながら歩いていると、
すれ違う女の人たちが
狐さんを見ては頬を染める。
注目を浴びているその感覚に少し居心地が悪くなる。
そりゃそうだよね、こんなかっこいいんだもん。
私なんかが隣歩いてるのって変だよ。
その考えが頭によぎって、
私は狐さんとの距離を少しあけた。
それに気づいた狐さんが私を見て眉根を歪めて、不機嫌そうにする。
「どうして離れるんだ。」
「だって、」
「だって、・・・なんだ?」
「・・・狐さんがかっこいいから。」
「え?」
私がうつむきがちにそういうと、狐さんは呆気にとられたような顔で驚いた。
「普通だ。」
そう言いながら顔をそむけた狐さんの耳が少し赤く染まっていた。
「・・・照れてます?」
「うるさい。」
「図星ですか。」
「黙れ。」
どんどんぶっきらぼうになっていく狐さんの口調に思わず吹き出してしまった。
「あぁ、もう!笑うな!
ったく・・・ほら、こっち寄れ。」
ぐいっと腕を引かれて、
いきなり距離が縮まる。
その後ろを自転車が通る。
あ・・・、自転車が来たから避けさせてくれたんだ。
納得はするものの、
掴まれている手が熱かった。


「あ、狐さん、ここどうですか?」
「ここは?」
「お団子喫茶です。
いろんなお団子があるんですよ。」
「・・・団子屋か!」
狐さんの顔が輝いた。
そういえば、と脳裏に浮かびあがってきたのは、初めて会った日。
帰ろうとしていた私を呼び止めた狐さんの手の中には、お団子があった。
・・・団子好きなのかなぁ。
「朱里、早く入るぞ!」
スタスタと暖簾をくぐって店内に入っていく狐さん。
「あ、ちょっ・・・待ってください、狐さん!」
私もそのあとを追って店内に入って行った。