「・・・かっこいいもんなぁ。」
ポツリ、と呟いた私の足は、
自然に止まっていた。


「かっこいいですねぇ。
大学生ですか?」
「だいがく・・・?」
「てか、一人ですか?」
「いや、えっと・・・」
「私達とランチ行きません?」
数人の女の人に腕を引っ張られている狐さんは露骨に困った顔をしていた。
どうしよう、とその状況を見ていると、ふと狐さんと目があった。
「朱里!」
「えっ、」
私を見つけて、少し安心した表情で近づいてくる狐さん。
さっきまで彼を誘っていた子たちが、睨むような目で私を見る。
・・・視線が痛い。
私のもとまで来た狐さんは、
「あ。」と何か思いついたように声を上げた。


次の瞬間、私の肩には狐さんの腕が回っていた。
思わぬ状況に固まっていると、
「俺、彼女以外興味ないから。
せっかくだけど、ごめんね?」
と、隣で微笑む彼。
その状況にますます固まる私。
それを聞いて、彼女たちは文句を言いながらその場を去った。


「・・・朱里?」
彼女たちが去った後も固まったままでいた私に、狐さんが顔を覗き込む。
「・・・なんですか、今の。」
「何って・・・。」
「いつもの狐さんと違ったから。」
びっくりした、と呟くように言うと、
狐さんは笑って、
「女の子はあーゆーの好きだって、
天狗が前言ってたから。
朱里が喜んでくれるかなと思ったら、
やってみたくて。」
無邪気にそういう彼に、
「かっこよかったです。」と言うと、
「やった」と喜んだ。
その姿に頬が緩む。

・・・今度天狗に会ったら、
純粋な狐さんに変なこと吹きこむのはやめろって言おう、と心の中で決心した。