「おじゃまします。」
「ふっ、いつもは言わないくせに。」
「うっ・・・。」
狐さんはいつもの姿に戻っていた。
小花駅にある神社に連れてこられた私。
さっきまで泣いていたせいか、目が腫れているらしく、瞼が重たい。
「どうして、来てくれたんですか。」
「ん?」
「お母さんのお葬式にまで来て、私を引き取るとか・・・どうして言ってくれたんですか。」
「じゃあ、俺が行かない方がよかったか?」
そう聞き返されて、私は首を横に振る。
「ならこれでよかったか?」
戸惑いがちに首を縦に振ると、ふっと狐さんが笑って私の頬に手を伸ばした。
その手はどこか温かかった。
「俺もこれでよかった。
互いの利害が一致してるんだから、問題ないだろ?」
私を見つめながら言うそれに、また心が温かくなって、涙があふれる。
「・・・泣き虫。」
零れていく涙を袴の袖の端で拭いながらそう言う狐さん。
「狐さんが泣かせてるんです。」
「俺のせいか。」
呆れたように苦笑いする。
その笑みに一瞬見とれる。
その視線に気づいた狐さんは、手を私の後ろ頭に回し、ぐっと引き寄せて袴に私の頭を押し付ける。
私の肩に頭をおいた彼の髪の毛が首に触れて、少しくすぐったい。
「じゃあ、泣くときは俺の前で泣け。」
「でも、迷惑になります。」
「誰もいないところで泣くより、俺の前で泣かれた方が何倍も安心する。
迷惑とは思わないから、な?」
「・・・はい。」
こうして、私は狐さんのもとでお世話になることになった。
その時間は長くは続かなかったけれど、私の居場所だった。