16歳の7月の中旬の事だった。
「あー・・・やっちゃった。」
私、立花朱里は登校中だった。
・・・といっても電車を寝過ごし、
気づけば終点駅で。
次に電車が来るのは一時間後。
周りには日陰になるところもなく、
人影も、住宅も見あたらない。
まるで何かの物語みたいな森の中の駅。
そんな場所とは似ても似つかない
”小花駅”という駅に私は突っ立っていた。
「・・・待つしかないか。」
携帯を出すものの、
電波がつながらない。
暇つぶしできるものもなく、
私はぼうっとただ待つことしかできなかった。
だんだん頭が痛くなってくる。
視界が白くなる。
意識が飛ぶ感覚に気持ちが悪くなる。
「・・・おい。」
遠くで男の人の声がした。
低くて、頭に響く。
それが心地よくてまた意識が飛びかける。
それと同時に身体が浮く感覚。
背中と膝裏にヒンヤリとした肌の感触。
そんなことを考えていた時には、
私の意識は完全にシャットダウンしていた。