次の日の夜明け、俺は鳥居の先の階段の
一段目に腰を下ろしていた。
その視線は階段の下の小さな駅で。
その駅は一つしかない外灯に照らされていた。


”また会いに来てもいいですか。”


少女の声が頭の中に繰り返される。
目を閉じて背後の鳥居にもたれかかる。
ガタンガタン、と電車の音が聞こえる。
どうやら始発電車が来たらしい。
涼しい風が頬を撫でる。
その風で乱れた髪をかきあげると、
トントントン、とリズムのいい音が階段を上ってくる音が聞こえた。


___まさか、な。


少しずつ近づいてくるその音に、
心臓が大きく波打つ。
苦しくなって袴をそっと握る。
こんな早い時間に、来るわけない。
ましてや昨日の今日で。
こんな俺に会いに来てくれるわけ・・・



「あれっ・・・、狐さん?」


頭で繰り返されていた声が、
目の前から聞こえる。
そっと目を開けてみると、
俺の座っているところから少し降りたところに驚いた顔で突っ立ている朱里の姿。


「何をしている。
こんな早朝から・・・。」
思わず、呆れたそぶりをする俺。
待っていたと思われたくなかった。
「へへ、来ちゃいました。」
そういって口に手をあてて、
悪戯笑顔で笑う彼女。
「・・・、暇人め。」
そう言う俺は顔をそらしていた。


”再会”が、胸の奥をくすぶる。
それは別に嫌じゃなく、ただ嬉しかった。