少女・・・立花朱里と出会ったのは、
小さな駅のホームだった。
むさ苦しいその森に、
ちょこんとあるその小さな駅は、
その様子からはかけ離れた、
”小花駅”という名前だった。
ほとんどがこの森の住民によって使われるだけのその駅は、不思議と無くなることもなく終点駅としてそこにあった。
この駅まで人間が来るのは、
もう何十年ぶりの事だった。
椅子も日陰もないその駅に、
顔を真っ赤にしてキツそうな彼女の姿。
見つけた時は驚いた。


「おい。」


気づいた時には声をかけていて、
その呼びかけにも応えられない彼女を抱き上げて運んでいた。
人間の少女に触れるのは不思議な感覚がした。
柔らかいのに弾力があるのに、
透き通った色で脆く割れてしまいそうで。
寝ているうちに少しずつ顔色が戻る彼女の幼げながらに大人に近づいた綺麗な顔を、じっと見つめていた。
染まった頬と唇に、思わず「美味しそう。」という心の声が脳裏を過る。
無意識に彼女の顔に手が伸びる。


「ん・・・。」
「っ、」


突然、寝ていた彼女が寝返りを打った。
その時に零れた彼女の声は、
まるで窓際に揺れる風鈴のようで。
ハッと我に返った。


「俺は・・・何を・・・。」

「んぅ・・・。」

「っ、」


彼女の幸せそうな顔から目が離せなかった。
ボッと顔に熱がこもるのを感じた。
普段は中々暑さを感じない身体が、
大きく波打つような感覚と同時に熱くなる。




「なんだ、これは・・・。」

訳が分からなくなった俺は、
風の涼しさを求めて神社の外へ身体を運んでいた。