「ほら、食え。」
「わぁ、美味しそう。」
私達は大木に腰かけていた。
天狗はどこから出したのか、
林檎飴を凍らせたようなものをくれた。
かじってみると、冷たくて不思議な味がした。
「そういえば、・・・」
「なんですか?」
「朱里は狐のことが好きなのか?」
「ぶほっ・・・!!」
不意の質問に喉に詰まらせてしまった。
天狗はこれを見て笑っているのだからタチが悪い。
大体、貴方が変な質問をしたのが悪いのに。
「・・・その反応は、図星か。」
ふっ、と目を細めて私を見る天狗。
「ち、違います。」
慌ててそういうと、
天狗はどこかホッとしたような顔をした。
「なら、いい。
これからも、そのままでいろ。」
「へ?」
急に厳しい口調になった天狗に違和感を感じる。
「どうして、ですか?」
「なんだ、狐を好きになる予定でもあるのか。」
「・・・ないですけど。」
「なら、知らなくていい。」
「・・・はい。」
理由が気になるけど、
この人だけにはこの想いは知られたくなかった。
からかってくるのが目に見えてますしね。
まぁいいや、とまた林檎飴をかじる。
それきり、天狗は黙ってしまい、
私もそれにつられるかのように声を出さなかった。
バサッ、_______
翼が風を打つような音がし、
振り返ってみると、黒い裾の長いパーカーのようなものを着て、天狗よりも少し小さな翼がある少女が立っていた。
「天狗様、お仕事です。」
その少女の声はどこか不気味で、
心の深いところに届くような音だった。