前の主人はね、小雨によく似てたんだ。誰よりも優しくて、悪いことを許せない人だったんだ。そうだ、前の主人が小雨と同じ年の時。
前の主人はイジメられ始めたんだ
最初は無視から始まった。僕は心配だったんだけど、主人の両親はイジメにまったく気がつかなかった。
主人も僕以外、誰にも言わなかった。
それから、だんだん体にアザをつけて帰ってくるようになった。文房具をなくしてくることも結構あった。
それから1ヶ月ぐらいたった頃かな――
真夜中、僕の主人が珍しく勉強をしていた。机に向かって何かを必死に書いてるんだ。
やっとそれが終わったと思ったら、主人がフラフラな足どりで窓の鍵を開けて、ベランダに出ていったんだ。
僕もその後をついていって、ベランダに出たんだ。主人は風になびく髪をおさえながらこう言ったんだ。
「一緒に……死のっか」
それから主人は僕をそっと抱き上げて
飛び降りたんだ―――――…………。
僕は主人がクッションになったせいで、死ねなかった。
主人は死んだんだ。
後から聞いた話だけど、あの時主人が必死で書いていたものは“遺書”だった。
それから僕は捨てられて、小雨と出会ったんだ。
前の主人はイジメられ始めたんだ
最初は無視から始まった。僕は心配だったんだけど、主人の両親はイジメにまったく気がつかなかった。
主人も僕以外、誰にも言わなかった。
それから、だんだん体にアザをつけて帰ってくるようになった。文房具をなくしてくることも結構あった。
それから1ヶ月ぐらいたった頃かな――
真夜中、僕の主人が珍しく勉強をしていた。机に向かって何かを必死に書いてるんだ。
やっとそれが終わったと思ったら、主人がフラフラな足どりで窓の鍵を開けて、ベランダに出ていったんだ。
僕もその後をついていって、ベランダに出たんだ。主人は風になびく髪をおさえながらこう言ったんだ。
「一緒に……死のっか」
それから主人は僕をそっと抱き上げて
飛び降りたんだ―――――…………。
僕は主人がクッションになったせいで、死ねなかった。
主人は死んだんだ。
後から聞いた話だけど、あの時主人が必死で書いていたものは“遺書”だった。
それから僕は捨てられて、小雨と出会ったんだ。