「あ・・・大丈夫です。ボウルが落ちただけですから。ごめんなさい、まさかいるとは思わなくてびっくりしてしまって・・・」

「いや、こっちこそ悪かった。少し早く帰ってこられたからお前を驚かそうとした俺が悪い。本当にどこも平気か?お腹は何ともないか?」

必死で様子を確認する俺に美羽は思わず吹き出した。

「大丈夫ですよ。びっくりはしましたけど、どこも何ともありません。・・・お腹の子もパパに早く会えて嬉しいって言ってますよ」

そう言って美羽は柔らかく笑った。
・・・なんだか既にすっかり母親の顔になっている。これが母性ってやつなんだろうか。俺はその顔につい見とれてしまっていた。

「潤さん?」

「あ、いやなんでもない。ほんとに悪かったな。・・・それにしても今日はやけに凄い料理の数だな。もしかしてこのために休んだのか?・・・まさかな」

さすがにいくらなんでも料理のためだけに彼女が仕事を休むことはないだろう。俺は冗談交じりに聞いてみた。だが、予想に反して彼女の顔がみるみる赤くなっていく。

「・・・・美羽?」

「あ、あの・・・・お風呂!先にお風呂に入って来てくれませんか?その間に準備を済ませておくので」

俯いてもじもじしていたかと思えば急に顔を上げてそんなことを言い出した。

「え・・・もうか?別に構わないけど・・・」

「じゃあそうしてください。お願いします!お風呂は入ってるのでゆっくりしてきてくださいね!」

言うが早いか、そのままリビングを追い出されてしまった。
・・・・・なんなんだ?まぁ時期にその理由もわかるだろう。
俺は美羽の言うとおりゆっくり風呂に入ることにした。