「おはよ。
今日もちびだなおい」

とか言って笑うこいつは河野 京矢(こうの きょうや)。
地区が隣で、
クラスも一緒だから毎回顔をあわせる鬱陶しい変態男子。

「…うっさい」

でも、こいつ顔だけはいいんだよなあ…
私の友達やクラスメイトの殆どが
こいつ狙いなんだとか。

薄くて細長い眉。

切れ長で女子みたいな形の目を
女子でも滅多に見ないくらいの
多くて綺麗にカールした睫毛が彩っている。

茶色っぽさの少ない黒い瞳も大きくて

見事に真っ黒な髪も肩までという
男子としては異例の長さ

鼻はそれほど高くはないものの幅が狭くて長く

口はいつも不敵と言うよりいたずらした子供のような笑みを浮かべている。

全体的に浅黒くて外国人みたいな、
まあ簡単に言えばナルシストみたいな女子っぽい外見だ。
と言うより、ここまで 背が高くなければ多少鋭い雰囲気だが女子に見える。


私のタイプではないので
こんなのの何処がいいんだか…

と思いつつ見上げていると

「なんだよ睨むなよー…」

そう言って頭をぺしぺしと叩いてきた。


…これ以上ちびにする気かこいつ

腹が立ったので
女の武器こと昔から硬かった爪をその手に立てた。

アトピー性皮膚炎の私にはヒトの皮膚を剥ぐ、
もしくは肉まで抉るという中二病を患っていなかったにしては物騒な特技があるのだ。

これはじゃれあいの内だから軽くのせるだけにしたのだが
やっぱり痛かったようで河野はばっと手を退けた。

「痛い痛い!
勘弁してって」

爪をたてられた手を振りながら
でも何処か楽しそうに騒ぐ河野。

「じごーじとくでしょ」

そう返しつつ、
やっぱ嫌いなことに違いはないけど楽しいな
と思った。

女子との会話とかでこんな風に騒げることはないし
爪を立てられて当然なことをしてくるのがほぼこいつだから
ストレス発散やなんやに役立っている。

ひとしきりギャーギャーと騒いだ後
朝休憩が終わるチャイムとほぼ同時に私は席に着いた。