そうして。

「…緊張する」

2人で決めてた路上ライブデビュー当日。

「大丈夫。何回も練習したでしょ?」

「うん…また、化け物って言われないかな…?」

「タツミが化け物なら僕も化け物だよ」

「ハリーが化け物なわけ…‼︎」

「だってタツミが化け物なら僕も化け物だよ。同じ、異色だもん」

「…」

「いいんじゃない、化け物だって。

他の人とは違うんだよ?僕たち特別なんだよ‼︎」

「…化け物たちの正義のヒーロー、“Colors”…」

キュッ、と首元に巻かれた赤いマフラーを握りしめる。…イイじゃん

「独りぼっちが集まって2人ぼっちだね」

「何人ぼっちになるかな、最終的には」

「色んな色を集めようね‼︎」

「うん…もっと世界を染めていこう」

「そーだ。タツミ、この歌詞ってどーいうイメージ?」

「…異色たちが出会った時のお話だ」

「オープニング曲だねっ」

「そうだね。

………行くよ」

「はーい‼︎」

ハリーの首元にはオレンジのマフラー。

マイクを通し、通行人達に呼びかける。

「皆さん、聞いてくださーい‼︎」

ザワザワし始めた公園。

(2人とも、異色…?)

(ヤダ、なんで異色が‼︎)

(そんなこと言わずに聞いてみよーや)

(異色だ)

(本物の異色なんて初めて見た)

興味本位で残る人、異色とわかった瞬間足早に去っていく人。

それぞれだけど、なかなか人数は居る‼︎

「私達‼︎」

「正義のヒーロー」

「「Colorsです‼︎」」

(異色が正義のヒーロー?)

(カラーズ?)

「今から歌を歌います‼︎」

「聞いてくださーい♪」

「「Colorsで“Color”」」

ひとつ深呼吸をして、ハリーに合図を送る。

キーボードが始まると途端に周りが静まり返った。

『世界にイロなんてなかった、ただモノクロの世界。

いつも世界はシンプルで、周りと違うものを受け入れなかった。

そう言って泣く私に君はただ笑って、

そんなの関係ないんじゃない

と言った。

ずっと周りの常識に縛られてないで自分らしく羽ばたこう?

“Color”イマ、世界にイロがつき光を放った。

君が私にくれた、たくさんのイロ

形のない未来。真っ白なキャンバスに、君と描くよイマ、光を辿って。

さぁ‼︎


君が居れば。ほら。世界が染まってくよ、色鮮やかに

“Color”イマ、世界にイロがつき光を放った。

眩しさに目が眩んでも、もう手を離さない。絶対に‼︎

例え、何も見えなくたって君と居れば大丈夫だから

自分らしく、ほら。世界を染めていこう

私達イロで世界が染まる

イマ』

ペコリと頭を下げると少しだけど拍手の音がする。

ハリーがマイクを取る。

「ご視聴ありがとうございましたー♪

今はまだ2人だけだけど、いつか世界で羽ばたくつもりの僕たちでーす。

団長はタツミ。ボーカルでぇす」

はい、とマイクを渡される。

また化け物って言われないかな…?

大丈夫、ハリー…コウが居る

「正義のヒーローColors団員No.1の団長、タツミ…世界を私達のイロで染めて行きます!」

「団員No.2、ハリー♪キーボードです」

「独りぼっちが集まって今はまだ2人ぼっちのグループです。

異色たちへ、伝えたいことがあって来たんだ。

独りぼっちならココに来い‼︎ココなら独りぼっちじゃない‼︎ココなら人をバカにしない‼︎」

「君のイロを僕たちにも見せてくださーい‼︎」

「来週もココでまたライブをする‼︎その時に入りたい奴は私達に声をかけろ」

「拒否なんて僕たちはしないからねっ」

「「Colorsは、皆を待っています‼︎」」

(凄いなあの子たち)

(まだ子供じゃない?)

(異色だからって侮れないな)

2人でお辞儀をすると拍手の音に包まれた。






「…ビックリしたよー、タツミったらいきなり叫ぶんだもん」

ライブが終わり、家に向かって歩く帰り道の途中、ハリーが呟いた。

「……なんか、衝動的に」

「僕はあっちのつぼみも好きだよ」

「……“俺”頑張る」

「…お、れ…?」

ポカンとしているハリーの顔を見て軽く笑う。

「Colorsを、守りたいんだ。だから、強くなる」

「…タツミは形から入るタイプなんだね」

「…うっせ」

「あ、ぁぁぁぁぁあ、あのぉぉ」

震える声に呼び止められる。

そこに居たのはフードを目深に被った女の子。

「どーしたの?」

「ゎ、私、さっきのライブ見てかっこいいなって思ってそれで、か、Colorsに入りたくて…が、楽器とか出来ないけど独りぼっちだから、もしかしたら入れてもらえるかなって…っぁ、ほら、私こんな容姿だからぃぃいじめられてて、化け物って…」

そう言ってフードを取るとエメラルドグリーンの瞳に淡い水色のふわふわの髪が現れる。ふわふわの髪は腰まである。よく今までフードで隠せてたな。

「俺は龍山つぼみ。Colors団長だ」

「僕はぁ、播磨 幸!キーボード担当だよ」

「ゎたし、は美桜 詩音(ミサクラ シオン)…です。」

「マフラーはエメラルドグリーンだよね」

「その色の毛糸ってもう無かったよな?」

「名前は、ミサ?」

「ミオン?」

「ぇ?ぁ、あのお?」

「ミサクラちゃん!どっちがいーい?

ミオンかミサ!」

「お前の名前だ」

「…私、ミオンがイイです!」

「団員No.3、ミオン。入団手続き完了だ」

「よろしくねぇ、ミオン♪」

「…はいっ」

「ミオン歳いくつだ?」

「僕たちは16歳の高1だよ」

「私も、16で、高1!」

「じゃぁタメ口にしよーぜ、なぁ、ハリー?」

「うん、ミオンどこの高校?」

「私?私は通信制の学習システムだから高校には行ってないの」

「そーなの?僕はすぐそこの花咲高校だよ。タツミも一緒」

「あんま、行ってないけどな」

「じゃぁどうやって勉強してるの?」

「出席日数だけ埋めてあとはハリーのノートを見て自主勉強かな」

「へぇー」

「とりあえず、ミオンは僕たちの家に来なきゃだね!」

「帰るか」

3人並んで歩き出す。3人ぼっちになった。

「ねぇ、タツミ。そのマフラーなぁに?」

「団員の証だ」

「ミオンはエメラルドグリーンのマフラーだよ」

「私も貰えるの?」

「もちろんだ。ハリー、手芸屋まだ開いてるよな」

「今19時だからー…うん、まだ開いてる!」

「行くか」

「楽しみ…」


1人増えたColors。幸先いいスタートだ