「こ…う」
「つぼみ」
「あっ…」
コウの頬には切り傷がある。
「さっき、投げたの当たったの…?」
「団長サン⁉︎また凄い音しましたけど…」
「タツミさん?」
「どうしたんだ?」
「タツミ…?」
部屋のドアが開いて、皆が顔を覗かせる。
どうしよう。
コウが皆の方を向く。
「なんでも無いよ!僕がコップ落としちゃったんだ♪」
「えっ、でも顔…」
「指切っちゃって…その指で顔触っちゃってさ〜えへへ」
「じゃぁこの散らかってる部屋は?」
「タツミがその音にビックリして起きちゃって。泥棒かと思ったみたいで物投げられちゃった」
「そうなんですか!ハリーサン気をつけてくださいね」
「ビックリしたぁ」
「いやぁ、ゴメンね?」
皆が出て行ったのに、ヒビヤだけが残る。
「…ヒビヤくん、どうしたの?」
「ホントにそうなのか?」
「ん?」
「なんか、あったろ?」
「…いや、なにも「あったよ」
「タツミ⁉︎」
「ふーん。ま、無理に言えとは言わないよ」
「…いつか、話すさ」
「そん時まで待ってるよ。それから皆気づいてるから」
そう言ってヒビヤは出て行く。
パタンとドアが閉まると同時に2人で息を吐く。
「…焦った。でも、結局なんかあったってバレてんだな」
「うん…ゴメンねつぼみ」
「俺こそゴメン。顔…」
「これは自業自得だよ。…ゴメンね、昔のこと思い出させちゃった?」
「…」
「ちゃんと話してくれるまで僕…僕たち待ってるよ。ね?皆」
「え…?」
ガチャ、と扉が開き、皆が罰の悪そうな顔で入ってくる。けど強い光を放つ瞳をしている。
「俺達、ずっと団長が話してくれるまで待つよ」
「何年かかっても、何十年かかっても私達はタツミさんの側に居ますから」
「私達は団長サンを裏切ったり見放したりしません」
「タツミ。私達タツミが大好きなの」
ミオンが近くに来てそっと俺の手を握る。
「ハリーも、ヒビヤも、ヒナも、トワも、私も。タツミに…龍山つぼみと言う人間に出会えて、心から良かったって思ってるの。」
「ミオン…?」
「大丈夫だよ。」
「私が側に居ますよ、団長サン♪」
「私も側に居ます、タツミさん」
「俺も側に居るよ、団長」
「私も側に居る、タツミ」
「僕だって側に居るさ、つぼみ」
こんなに、優しい仲間が居てよかった。
「ありがとぅ…」
でも、団員に甘えてばっかじゃ団長失格だ。
「あと…あと、少しだけ待ってくれ。そうしたら…話すから」
溢れそうになる涙をこらえる。
「待ってるよ」
「待ってます」
「焦らないでくださいね」
「いつだっていいさ」
「つぼみが話したい時に話せばいいよ」
今だけなら、甘えてもいいよな…?
「うぇ…ひっく…」
皆、ギュッと俺を抱きしめてくれる。
ヒビヤも、ヒナも、トワも、ミオンも、ハリーも。
俺の存在を確認するかのように。
「今だけっ…甘えさせて…」
「今だけじゃなくてもいいんだよ」
「いつまでも…甘えてたら団長失格だ…」
「俺は、普段は強くてかっこいい団長でもたまには甘えてほしいよ」
「完璧な人間なんて居ません」
「団長サンは団長サンですから!」
「前とは違うんだよ」
「…ごめっ、ん…」
「タツミ、そういう時はね、ありがとうって言うの!謝るんじゃないんだよ」
「……ありっ、ありがとう!」
俺も皆を力いっぱい抱きしめる。
皆幻じゃないのかなって。
けど
「あったかい」
幻じゃ、ないようだ。
泣き疲れた…な。