気づくともう7時。
けっこう長くこのカフェに
居座っていたんだと実感する。




「もう、帰る?」


「うんっ。そうだね。」





お会計を済ませ、2人でカフェを出る。
このカフェは駅の近く。

桑田君は徒歩ではなく電車通学だから
私とは全然通学方法が違う。

徒歩でも帰れるらしいけど
電車の方が早いから電車で
通学しているみたい。



今日の会話で、桑田君の事
たくさん知れたなぁ…。






「雪菜ちゃん。俺電車だから。
ここでバイバイだね。」



「うん。桑田君気を付けてね。」



「それこっちの台詞だよー。雪菜ちゃん
可愛いから。…じゃぁバイバイっ。」



「うん。バイバイ。」




桑田君が見えなくなるまで、
私は桑田君を見送った。

手を振る桑田君は爽やかで
本当に柔らかい人だと思った。



桑田君とお別れして私は徒歩で
家まで帰った。



十字路に差し掛かったとき、
誰かの足音が聞こえた。




(…誰かいる…?…これ…1人じゃない。
何人かいる…!!…5、6人ってもんじゃ
ない。それ以上いる…!…何?!)




突然の事で頭が混乱する。
こんな事は何回かあるから慣れてるけど
あんな大人数は初めて。


どうしたら良いのか分からない。




私が足を止めると相手たちも足を止める。
歩き出すと相手たちも歩き出す。



完璧についてきてると確信した。



ダメもとで、たたかおうか…。



決心し後ろを振り返ると、
そこには全く知らない男性たちがいた。

身なりはとてもチャラく
これぞ不良って感じ…。




「あんたたち何なの…?!」




私が、構えると彼らの1番上と思われる
人が口を開いた。




「おいおい。お前1人でたたかう気か?
…やめとけ。お前、今藤財閥の社長令嬢
だろ?やっぱ噂通り可愛い顔してんじゃん?」



「だから何?」



「おーおー、つめてぇなぁ?
お前の選択肢は、俺らに従う。これだけ
だ。分かるか?今のお前は不利だ。
いくら有段者でもこの人数には
敵わねぇよ。……っつー事で乗れ。」





彼は、顎でくいっと差した所には
黒い車が何台も止まっていた。



私は、抵抗出来ないようにと
手を縛られ、無理矢理車に乗せられた。


私の隣には先程の大将と思われる
男性が座っていた。

気安く私の腰に腕をまわしてくる。


正直、気持ち悪いし怖かった。




「へぇ?近くで見ればもっと可愛い。
…どぉ?俺の女になる?」




はぁ?初対面の人にそんな口の聞き方。
親はどんな教育したんだか…。
呆れる…。


その男は、私の顎をクイッと持ち上げて
「俺の女になれ。」何て命令してくる。


平気で私の髪の毛に触れてくる彼。
そんな手で触れて欲しくない。
あんたなんかに触れられたくない。

そう思ったけど、今は大人しく
冷静にしとくのが身のため。




「髪の毛もキレイだねぇ?雪菜ちゃん?
やっぱり、噂通り。力づくでも俺の女に
してみせる。そのためには手段は
選ばねぇよ?俺。」




この人は、私を自分の物にするのが
1番の目的。

こんな人と一生一緒なんて
まっぴらごめんだね。



大将と思われる、あの男に付いている
腕時計を見ると、もう8時を指していた。




すると、車が急にカーブし、バランス
を崩す。
運転している人は、「着きました。」と
何なんとか言ってるけど、そこは、
いかにもお屋敷って感じで、
私のお屋敷くらいの大きさだった。



と言うことは、この男はどこかの
財閥の息子だと分かった。




車が停車し、無理矢理私は
車から出される。

腕を引っ張られ、地面へ
転げ落ちてしまい足を
怪我してしまった。




「おいっ!!!!コラァ!!!!俺の女に
怪我させんな。丁寧に扱え。」




そんな怒鳴り声が聞こえる。

転んだ拍子に口に当てられた布が
取れ、喋ることは可能になった。




「私が、いつ、あんたの女になった
って?あんたの女になった覚えはない。」


「あぁ?俺にたてつく気か?」


「だいたい、私があんたの女なら
こんな風に手を縛りはしないはず。」


「逃げねぇようにするためだ。
大人しくしてろ。」




私は、無理矢理立たされ、お屋敷の
中へと入れられた。


お屋敷へ入ると、私はある1室へと
通された。


部屋を見回すと、そこは、この男の
部屋だと言うことが分かった。


寝室、テレビ、お風呂、書斎…。
全てがこの部屋に取り付けられていた。




「鍵かけたから、外からは開けられ
ない。…お前も大人しくするのが
身のためだ。」




そう言い、私を縛っていた縄をとき、
口に当てられていた布も全て
取ってくれた。




「今、ここで誓え。
俺の女になる、ってな。言え。」




(こいつ、どこまで強引なの?)




「私は、あなたの女にはならない。」


「へぇ?そうか。なら約束通り
嫌でも誓わせる。」


「何する気?」


「襲いはしねぇ。んなのは俺の女に
なった時でな。…その代わりお前の
彼氏が痛い目みるかもなぁ?」




彼氏…。


桑田君っ?!
桑田君に痛い目?!
暴力は絶対ダメ!!桑田君に
手は出さないで!!





「桑田君には手出さないで!!!!」


「ほぅ?なら誓え。」





何でこんな事に…。

前にもこんな事あったっけ…?
相手は同級生で場所は屋上…。

助けてくれたのは、あの
たっくんって男の人だった…。




「ほら、誓えよ。」




私の顎をクイッと持ち上げて
誓うように命令してくる。


絶対言いたくない。
…けど、言わなきゃ桑田君が…!!



そう思ったとき。