昼休みの終わりを告げる
チャイムがなる。
まるで、私の恋の終わりを
告げているようで。
「雪菜ちゃん、戻ろ?」
「…ううん。もうちょっとだけ
ここにいたいの。先行ってて?」
「そっか。体冷えちゃうから
すぐ戻るんだよ?じゃあねっ。」
桑田君は、笑顔で手を振って
屋上から出ていった。
(これからどうしようかな…。)
そう言えば、拓也さんの言ってた
“思う出せば”って何かな…?
私、やっぱり何かを忘れてる…?
それが分かれば、また少しは
違ったのかな…?
「いや…それと桑田君は関係
ないかもしれない。」
はぁ…。
自業自得だ。
今日は最後まで授業受けないと
高ちゃんがヤバイし…やだな…。
思い通りにいかなくて
本当にやんなっちゃう。
(少女漫画みたいにうまく
いけたら、すっごく良いのにな…。)
元気がないときは、高ちゃん
のとこへいくべし!!…ってね。あはは。
***
結局私は、5時間目の終わりに
屋上を出た。
教室へは向かわず、私は
真っ先に高ちゃんの所へ向かった。
廊下を歩いていると、
「ねぇ、雪ちゃーん」とか
「こっち向いてよ雪ちゃんっ!!」とか
とかうるさい男子たちが。
しまいには、腕引っ張って
無理矢理来させようとするし。
今、本当にピリピリしてるのに。
喧嘩売ってるのかっての。
すると、またもや
「ねぇ、雪ちゃん。」
と、ある男子が私の腕を引っ張った。
(もう…キレていいかな…。)
「なぁに?遊んで欲しいの?」
「うんっ!!俺たちと遊んで?ねっ?」
(はぁ…火に油を注ぐとは…。)
「そっか。……じゃぁ今遊ぼっか?」
軽く技をくらわせると
私の腕を引っ張った男子は
吹っ飛んでしまった。
やっちゃった…。
気は失ってないし、骨も折れてないけど
ここまでぶっ飛ぶなんて…。
軽くやったのに…。
まぁいいや。
「皆も遊んで欲しい?」
「「いえ!!見てるだけで十分です!!」」
私に声をかけてきた男子たちは
声を揃えて即拒否。
多分、これでもう男子たちは
私に近づかなくなると思う。
ピリピリしながら私は
再び高ちゃんの元へと向かった。
あいにく職員室にはいないらしく
私はいつもの会議室へと向かう
ことにした。
会議室の扉を開けるとやはり
高ちゃんはそこにいて。
「どーした。何かあったのか?」
「話を聞くだけでいい。
…私の話を聞いて。」
「お。何だ?告白か?」
告白…?
私が告白したいのは…
本命は…拓也さんだよ。
「私、一生高ちゃん何かに告白何て
しないからっ!!てかもし付き合えても
犯罪レベルだからねっ?!分かるっ?!」
「…今藤…お前ひどいな…。
まぁいい。何だ、言ってみろ。」
この会話のあとに話すのは
気が引けるけど、今頼りになるのは
高ちゃんしかいない気がする。
「…付き合ってる人がいる。」
「何だってぇ?!…絶対だめだ!!
俺は認めない!!兄さん認めないぞ!!」
「…てかあんた誰だよっ?!
兄さんって?!私、お兄ちゃんいないよ?!」
ほんと高ちゃんってこういう
おふざけ多いんだから。
よくもまぁ、こんな人が
教師になれたもんだ。
「彼氏って言っても仮何だけど…。
私…好きな人いるのに彼氏は別れない
よって…。
私が本当に愛したいって思う人が
出来たなら身を引くって言ったのに。
言ってる事全然違う…。
でも、…でも私も優柔不断で…。
ちょっとだけならって気持ちで
OKしちゃった…。
付き合ったら、逆に傷つけ
ちゃうのに…。」
「今藤は優しい…。どうせアイツだろ?
桑田とかいうやつ。アイツは普通に
いいやつだよ。それが分かってるから
今藤は言いづらくて言えなかったんだ
よな?…自分を追い詰めるな。
今藤は相手を傷つけるって考えている
が1番傷つけてるのは自分だ。
言っただろ?笑顔でいろって。」
高ちゃんから初めて聞く優しい声が
すごく温かくて包容力があって、
知らない間にたくさんの涙が
こぼれ落ちていた。
「もう…うっ…どっ…したら…
いいかっ…わかっ…ない…っ…。」
「…よしよし。今藤なりによく
頑張ったと思う。俺は。」
高ちゃんは優しく私を
抱き締めてくれた。
この話を誰かにただ聞いて
愚痴をこぼしたくて。
一気に何かがはじける感じが
したと思えば泣いてたんだ。
「教師が…生徒にセクハラしてる…。」
「ばっ!!…お前!!俺結構良いこと
言ったよっ?!マジで。」
分かってる。
分かってるよそれくらい。
嬉しくて、ただ嬉しくて。
だから、これでしか嬉しさを
表現できない…。
私は、…
「不器用だよな。今藤って。」
(そう。不器用何だ。)
って、何高ちゃんが不器用
とか言っちゃってんの?!
「そうそう、お前は不器用っ!!!!
あーはっはっはっ…グフッッ!!」
ちょっと調子乗ってたもんだから
1発お腹殴ってやった。
「今藤くせになんだ。有段者だからっ
て…!!結構痛いんだぞっ?!ったく。」
そう言う高ちゃんは口調とは
違う優しい笑顔で。
高ちゃんも十分優しいよね…。
「…高ちゃん…、今日は頑張って
授業受けるからね。ありがとう。」
「あったりめーよ。あと笑顔忘れ
んなよ。頑張れ、お前なら大丈夫だ。」
「うんっ!」
高ちゃんからの助言が私を
元気にしてくれた。
今日は何とか授業受けれそう。
……でも、それとは違う
何か嫌な予感がする。
小さい頃から勘は冴えてる子だから
きっと嫌な予感は的中すると思う。
桑田君たぐいのものでは
ない気がする。
この胸騒ぎ…けっこう
ヤバイ感じ…。