私が起きたときは、時計はもうすぐで
3時を指す頃だった。



(やば…寝すぎた。)



拓也さんに抱かれたまま、
何時間も寝てしまったんだと
考えるたびに速くなる鼓動と
顔が赤くなる自分がいる。




拓也さんの顔を見ると、それはもう
バッチリと目が合ってしまった。




(はいぃ?!…いつから起きてたんだ?!)




「雪菜今起きた?」


「…う、うん。…拓也さんは?」


「俺は30分前に起きた。」





30分前?!

それまで、ずっと私を
抱いてたって事…?!


なにそれ…何か素直に嬉しい…。




「雪菜、さすがに授業出ないのは
まずいから、今日授業でやる所
全教科教えて?」





(あ、拓也さんって確か
頭が良かったよね…。)



って何で私、こんな事しってんの?
まぁ、いいや。




「うん。ここにあるの全部だよ。」


「おう。んじゃ、要点だけまとめて
教えるから、しっかり聞いとけな。」


「はーい。」





私と拓也さんで勉強机の椅子に座る。



(私…話が全然入ってこない…。
だって…拓也さん意識しちゃう…。)




「雪菜。聞いてる?やっぱ
具合悪い?」



「えっ、あ、大丈夫…。」



「そっか、無理だったら言えよ。」




私は、コクりと頷いた。


拓也さんの教え方は凄く上手で、
正直先生より分かりやすい。

苦手だった問題も今は
スラスラ解けちゃう。




「テストに出る所って言えば、
ここと、ここ。あとこれも。」



「へぇ~。分かった。」




ほんとに凄い。
何でこんな頭いいんだろう…。

たまに拓也さんが羨ましく感じる。






***




約2時間拓也さんに教えて
もらい、やっと全教科の勉強
が終わった。




「ありがと。拓也さん。」



「…おいで。」



「?…うん。」





拓也さんに言われた通り
拓也さんに近付くと、私の
腕を引っ張って引き寄せてきた。


それと同時に唇に伝わる、温かくて
柔らかい感触。




(キ、キス…されてる…)




「ご褒美。」



「…ご、褒美…。」



「そ。どした?…キスだけじゃ
物足りなくなってきた?」





拓也さんは意地悪く笑って
私を見てる。


キスだけじゃ物足りない…?


…物足りない、かもしれない。


好きで、好きで、大好きで、
独り占めしたいなんて思ってる。


心臓の音、聞こえちゃうんじゃ
ないかってくらい大きく鼓動してる。



再び重なる唇。
今度はさっきよりも全然長くって、
強引なのに優しい。



私、拓也さんが好きなのに
全然しっくりこない。

この変な感じが凄く嫌…。


キスされて嬉しいのに悲しい。
…嬉しいはずなのに。





「…あ、おい。泣くなって。
わりぃ、無理矢理。嫌だったよな。」




違う。

何で悲しくなるのか分からない。
けど、キスされたのが嫌
なんじゃないんだよ。


この変なモヤモヤが全然取れない。


私は、抱き締めて頭を撫でてくれる
拓也さんを抱き締め返した。

涙が止まらなくて、嗚咽が止まらなくて
喋る事なんて出来ない。

だから、これくらいでしか
表現出来ない。




“キスが嫌だったんじゃないよ”




って気持ち伝わるかな…?


でも、拓也さんは「わりぃ。」って
言うだけで。
それがまた悲しかった。


謝らなくていいのに。
拓也さんは悪くないのに。



(私の好きって気持ちは
…いつ届くのかな…。)