「雪菜?!退院したのっ?!
も~…、寂しかったぁ~…。」
教室に入るなり、皐月が私に
抱き付いてきた。
それを追いかけるように、由香
も私の方へやって来た。
「皐月ね、雪菜がいない間ずっと
雪菜~とか言ってうるさかったんだよ?」
「あははっ。そうなの?」
私の事心配してくれてたんだな。
本当に友達っていいな…。
席について、由香と皐月と
話していたら、教室のドアから
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「雪菜ちゃんいるー?」
声のした方に視線をやるとそこには
桑田君がいた。
桑田君と目が合うと、あの子犬みたいな
可愛い笑顔で私の方へ走ってきた。
「雪菜ちゃんちょっと借りんねっ。」
皐月と由香にそう言うと、桑田君は
私の腕を引っ張って、教室を出た。
***
桑田君に連れて来られた場所は屋上。
屋上に着いても、私の腕を掴む
手は全く離さない。
「雪菜ちゃんさ、事故ったの?」
そんな情報どっから仕入れたんだか…。
まぁ、きっと由香と皐月だろうけど。
「事故にあったのは本当だよ。」
「マジっ?!本当だったんだね。大丈夫?」
「うん。多分。」
「よかったぁ~…。」と呟いて
屋上の床に座り込んだ桑田君。
私の腕を掴んでいた桑田の手
から解放される。
(私の事、心配してくれてたんだ…。)
その事に感謝と嬉しさを覚え、
私はしゃがんで桑田君と目線を
同じにした。
「ありがと。」
すると、桑田君が息なり私の
事を抱き締めた。
「よかった。」
桑田君の声は、いつもと違って
すごく柔らかい声だった。
本当に心配してくれてたんだな
って改めて実感する。
「相変わらず、髪の毛綺麗だね。」
「えへへ。ありがと。」
ふと、今のやり取りを懐かしく感じた。
桑田君ではない誰かと前にも
こんなやり取りをしたことが
あると思った。
髪の毛綺麗だねっていろんな人
から言われるけど、今思い出した
記憶は、私の大切な記憶の1部…
な気がするような…。
あの男の人と私、何かを
約束したような…。
一体、あの人と私はどんな
関係なんだろう?
『大人になったら、僕と
結婚しようねっ!!!!』
幼い頃の記憶がよみがえる。
(結婚…?)
そうだ…!!
私、結婚の約束したんだ…!!
あの男の人だろうけど、顔が
分からないから、誰かも分からない。
「…雪菜ちゃん?」
「えっ?!、あっ何でもないっ!!」
(もう少しで思い出せ
そうだったのに…。)
「1限目さぼろっか。」
「えっ?!」
「いーから、いーから。」
無理矢理私は、桑田君に
さぼらせられることに…。
まぁ、たまにはいっか。
気分転換に、一限目を私は、
さぼることにした。