***


俺は、家に向かい、ババァのいる
部屋のドアを開けた。





「おい、ババァ、鈴をどうにかしろ。
俺は、あいつとは結婚しねぇ。絶対。」




「あはは。バカをおっしゃい。
鈴さんとは結婚してもらうわ。」





「…はぁ…てめぇに言っても無駄だな。」





そう言って、俺は、ババァの
部屋を出ていった。




ババァが…母さんがあんなに
変わるなんて…。


父さんがいた頃は、母さんも
すげぇ優しい笑顔で。



俺の自慢の家族だった…。



けど今は違う。



あいつのせいで…。





(はぁ…。疲れる…。)





廊下を歩いていると、鈴が
歩いてくるのが見えた。





「あ、拓也ぁ♪」



「おう。」



「今から、お母様の所に行くの。」






俺は、鈴を無視し、また歩き出した。





「待って!!!!」



「何だよ。」



「私の事嫌い?…雪菜ちゃんが
そんなに好きなの…?
私…拓也の事大好き何だよ…?」




「あぁ、そんなに好きなんだ。
雪菜じゃねぇとダメなんだよ。わりぃ。」





立ちすくむ鈴を背に俺は歩き出し、
雪菜の家へと向かった。








***




俺は、雪菜の家に着くと、
真っ先に、お母様とお父様の
所へ向かった。





「失礼します。」



「はーいどうぞー。…って拓也くん!!」



「雪菜を事故に合わせてしまい本当に
申し訳ありませんでした。」



「ちょっ…顔をあげないさい拓也くんっ…」






慌てて、俺に駆け寄るお母様。



顔を上げると、お母様とお父様は
優しい笑顔で。





「雪菜ね…拓也くんが引っ越してから
もずっと…たっくん、たっくんって
言っててねぇ…。大好き何だろうね…。」




雪菜の小さい頃を話し出した
お母様は、どこか寂しげで。


きっと、今の雪菜の状態だと思う。


部分記憶喪失ってのが辛いんだろうな。






すると、さっきから黙っていた
お父様が口を開いた。




「拓也くんは雪菜が本当に好き
何だね…。執事の仕事がしたいって
言ってきた時はビックリしたよ。
大きくなっても、すぐに拓也くんだと
分かった。奥様によく似ているね…」




「そうねぇ…。」





あの時俺は、雪菜に会いたかった。
執事になれば、雪菜といられる
時間が増えると思ったんだよな。







遠い目で語るお母様とお父様。

次に言ったお母様とお父様の言葉が
俺は頭から離れなかった。





「もう少しだからね。もう少しだけ
我慢してちょうだいね…。」



「…頑張りなさい。」






(何を言ってるんだ?)




我慢とか頑張りなさいとかって…?



何かがあるんだ。

この言葉の裏には
何が隠されてる?




けど、きっとこれは
今考えても分からない…。



一体、どんな意味が…。