私は、ある部屋へと無理矢理
連れてこられた。






「誰の…部屋?」






連れてこられた部屋は、明らかに誰か
が使っているであろう場所で。


その証拠に、ベッドが
置かれていて、タンスや、机もあった。


その右の部屋は広々とした書斎。





確かに、ベッドとかは、お客様用で
普通に設置してあるけど、こんな
しっかりした部屋だとお客様用でない
ことはすぐに分かる。




あと、少し引っ掛かるのは、書斎。
私の部屋とママとパパの部屋には
もちろん書斎はあるんだけれど、



書斎のある部屋を使う人は、
家族と特別な人だけって
私の家では決まってるんだよね…。



つまり、この部屋を使ってる人は、
特別な人って事になる。






(本当に誰の部屋なの…?)





そんな事を考えていると、





「ここ俺の部屋。」



「ふーん。たっくんの部屋ねぇ











……って、え?…えっ?!」






(それはおかしすぎる。)




執事であるたっくんが、書斎のある部屋
を使ってるのは、引っ掛かる。


それだったら、たっくんは
今藤家では、特別な人って事になる。



それはさすがにおかしい。

パパとママにも執事はいるけど
その執事の部屋に書斎何かないもん。





(じゃぁ、何でたっくんは
書斎のある部屋に…?)







「そんな眉間にシワ寄せんなって。

…それより、雪菜、何で
顔赤かったんだ?」







(…?!)





しまった…。

つい部屋の事に集中しすぎて
部屋につれて来られた目的忘れてた…!!






下をうつ向いて黙っていると、
さっきのように、顎をくいっと
持ち上げられた。





「答えられないって事は…
桑田とか言う奴のせいだろ?」





(鋭いなぁ……)






て言うか、たっくんの顔が
近すぎて、ドキドキが止まんないよ…。



今度は、たっくんのせいで
顔赤くなっちゃう…。






「そうなんだろ?雪菜。
……遂に、キスでもされちゃった?」




「…?!」







息なり何て事を…!!



たっくんは、意地悪く笑って
私を見ているけど、どこか
不機嫌さが伝わってくる。





(…たっくん、怒ってる…?)





「答えて、雪菜。」




私に返答を求めてくるたっくんは
どこかやはり不機嫌で。





「さ、されてないよっ…!!」




私は、思わず目をそらして
必死に否定した。




(まぁ、されそうになったけど
メイドさんのおかげで回避出来たし…
されそうになっただけで、されてないし…)






けど、なぜか私は嘘をついた
かのような気持ちになってしまい
罪悪感を覚えた。





「なぁ、雪菜。ちゃんと俺の目見て?
されてないなら目見て、言えるよな?

それとも実際にされたわけ?」





「されてな…「やっぱ答えなくていい。」






「されてないです。」と言おうと
した私をたっくんは遮り、
息なり私の唇に噛み付いた。





そのキスからは、なぜか
嫉妬のような感じの気持ちが
伝わってきて、少し胸が傷んだ。







唇が離れたとき、たっくんを
見ると、少し熱っぽい目で。



ドキドキした。







「たっくん、私桑田君に
キスされてないよ?」





私がそう言うと、「知ってる。」と
たっくんは、少し掠れた声で
囁いて、私を優しく抱き締めた。







「俺、嫉妬してんだよな…。
雪菜は取られたくねぇって思って。」






その言葉が私の心臓をより
いっそうドキドキさせた。



たっくんが、どれだけ私が好きか

嫉妬するほど、好きでいてくれてるん
だなと心が温かくなった。







「もうパーティーも始まるし、
ダンスホールに移動するか。」



「うん。そうだね。」






たっくんの部屋を出るとき、
たっくんにあることを言われ、
顔の火照りとドキドキが
止まらなかった。




何気ない一言でも、大好きな人に
言われたら、何百倍、何千倍も
嬉しく感じるんだよね。