私が桑田君のいる部屋の前で
待っているとき、息なり
扉が勢いよく開かれた。
「ねぇ!!今藤さんっ!!
ちょっと入って!!」
ちょっと入ってと言われたものの
私は、桑田君に手を掴まれたため
どちらかというと、強制的
と言うか…、何と言うか…。
「ねぇ、見てっ!!!!似合う?」
素直にそう聞く桑田君を少し可愛い
と思いながら、見てみると…、
「…かっこ…いい…。」
私の口からはそんな言葉が
自然と出ていた。
ワインレッドの上品な
ネクタイがよく似合う。
桑田君は背もけっこう高いし、
普通にスタイルも良いから、
ピシッと決めれば良くはなると
思っていたけど…、
想像以上にかっこいい。
「え、まじ?やった…!!!」
桑田君はまた子犬スマイルを
私に向けていて。
私の心臓はドキドキしてて
いっこうに鳴り止む気配がない。
「……きゃっ…!?」
小さな声で、名前を呼ばれたかと
思うと、私は、扉の方に寄りかかって
いて、左右には桑田君の腕。
間近に桑田君の顔…。
状況をやっと理解する。
「…今藤さん…俺にドキドキ
してるでしょ?」
私の目をしっかり見て、
少し口角を上げて言った桑田君
はどこか色気を感じさせた。
この場から、早く脱出しようと
桑田君の名前を呼ぼうとしたとき
すぐに遮られてしまい…、
「ねぇ…今藤さん。
俺とイケナイ事…しよっか。」
遮った桑田君は私にそう言った。
だんだんと近づいてくる桑田君の唇。
咄嗟に私は目をつぶった。
その時、私が寄りかかっている
扉がノックされた。
そこから聞こえてくる
「お嬢様?桑田様?
準備の方は出来ましたか?」
メイドの声。
私は、逃げるチャンスだと思い、
扉を開け、走って逃げた。
長い廊下を走っていると、
誰かにぶつかった。
「あぶねぇな。誰だよ。」
頭上から聞こえてきた声。
私の大好きな人の声。
「たっくん。」
「雪菜か。」
下をうつ向いていると、
たっくんに顎をくいっと
持ち上げられた。
「お前どうした?…顔あけぇぞ?」
私に聞いてきたたっくんの声は
どこか心配そうで。
「来い。」
その一言を発した時、たっくん
は私の腕を強引に引っ張って
ある部屋へと入った。