「草野さんは、同性愛者なんですか?」
「ーー分かりません。ただ、同性の方を好きになったのも、付き合ったのも、1度だけです。」
「どうして好きになったんですか?」
「最初はただ。初詣の時ーー。確か私がよそ見をしていてぶつかってしまって、あの子が私のせいで転んでしまったのが、すべての始まりでした。最初は男の子だと思っていて、その時に連絡先を聞かれて。それが全ての始まりでした」
見た目がボーイッシュで。
最初は本当に女の子だなんて、わからなかった。
瞳がとてもきれいで、笑った時のエクボとか
多分一目惚れをしてしまったんだ
連絡先を聞かれて、交換して、連絡を取って、遊ぶようになって。夏に告白されて
その時に初めて女の子だって事をカミウングアウトされて。
「女の子と分かっていても付き合ったんですか?」
「はい。正確には告白されるまで男の子だと思っていました。でも、この人の傍には私が居たいって、そんな盲目的になっていたっていうのもあって、付き合うことにしました」
「その子と付き合っていた時、幸せでしたか??」
「はい。それは凄く。その時私はまだ17歳で。その子は19歳で、よくドライブに連れてってもらってました。一般的のカップルとも大差ないデートをしてました」
一緒に花火を見て、映画も見に行って
お泊りもして
海はあの子が嫌がるから行けなかったっけ
「どうして別れてしまったんですか?」
「些細な喧嘩です。私が家族にも、もちろん友達にもあの子と付き合ってるって事を言えなかった事にあの子が不満を持ってて、そのまま喧嘩になりました。それで、別れてしまいました」
今でも覚えてる
呪文みたいにこびり付いていた
“女と付き合ってるのやっぱり、嫌だ??”
あの子が初めて泣きそうな顔を
今まで泣かなかったのに
半泣きになりながら
それでも目を逸らさずに
私にそう問いかけた
その言葉が
ずっとずっと
はっきり、色褪せることなく覚えている