「1番にやるべき事はこの仕事です。こっちが本業です。保育士の仕事はあくまで息抜きです。その事をくれぐれも忘れないで下さい」


蓮は何も答えずiPodのボリュームを上げた。
体中に響き渡るのは新しいアルバムの中の1曲。
テンポの早い、リズムが脈打つような明るく派手な感じの曲だ。
この曲の振り付けを急遽、頼まれた。
コンサートで1曲目に使いたいからすぐに来るようにと、呼び出しの電話があった。
が、何度もかけられたその電話に、保育園にいた蓮はなかなか気付く事が出来なかったのだ。
マネージャーの月川が焦ったのは言うまでもない。
蓮は一時、行方不明状態だったのだ。


「分かってるとは思いますが、仕事は一人でやってる訳じゃありません。特に。コンサートにおいて蓮さんは仕上げの表現者なんですよ」