「……さん。蓮さん!」


バックミラー越しにマネージャーの月川が蓮に声をかける。


「蓮さん!ちょっと、しっかりして下さいよ。そんなんじゃ続けることは無理です」


いつになく月川が本気で厳しい声を出した。
これにはぼんやり外を見ていた蓮も、はっと我に返った。


「あ、ごめん」


「ごめんじゃないです。いいですか?あなたは国民的アイドル、トップアイドルなんです。SONIAの月夜見 蓮なんですよ。分かってます?」


もう何回も言われて来ている言葉。
本人に自覚を持たせる為、行動に責任を持たせる為に繰り返される言葉。
『呪文』
見えないこの言葉の糸は蓮の手足を緩く柔らかく縛って行く。


「分かってる。……分かってるよ」