夕日の射し込む窓をぼんやりと花畑 蜜は眺めている。
園庭にはピンクのコスモスがそよそよと風に揺れていた。
気持ちの良い夕暮れ。
ちょっと切ない夕日。
夕方の風は肌寒く、人肌が恋しくなる。
ふと、さっきの柚の温もりが指に蘇って来た。
と、同時に心がほわっと温かくなる。
何か大きな丸いものに包み込まれた気分になった。


「桃川 柚……」


何となく、名前を呼んだ。
何となく、恋しい。


「何だろう。この気持ち……」


机の上に置きっぱなしのマナーモードの携帯は、ずっと花畑 蜜を呼んでいた。