「危ないって!」


「降ろして!」


『きゃあぁぁーーー!』という柚の悲鳴とともに二人は床に倒れこんだ。
とっさに花畑 蜜は柚の体をかばう。
柚は花畑 蜜に抱きつく形になった。
細いくせにガチッとした体。
あ、でもこの柔らかい部分は?
腕?
手?
どこに触れてるのか分からないが、柚の心臓は勝手に心拍数を上げる。
何だかドキドキするのはどうして?
ん?
何か固いものに当たってる?


柚は目を開けた。
いい匂いを間近に感じる。
メガネ。
メガネだ。
え?
ちょっと待って。
この、くちびるに触れている柔らかいものは?
待って!


メガネの奥から程よい大きさの二重の目が柚を見ている。


「ごめんなさい!」


柚はかぶさっていた花畑 蜜の体から飛んで離れた。


「ほんとにごめんなさい!」


くちびるを右手で押さえながら、柚は下を向いて走って部屋を出て行く。