「私の服じゃあないんだからぁーー！」


足に力を込めて必死に踏ん張る。
衣装だけど、ただの衣装じゃない。
みんなで必死に作った、子供たちが喜んで着てくれた衣装。
落とすなんて出来ない。


「うぅーーー。あぁー！」


天井が一気にスライドし、柚の体が大きく後ろへ反る。
『ダメだ！』
心がボキッと音を立てて折れた。
『大丈夫。中は壊れない。大丈夫！』
心の中で勝手な言い訳をする。
そして自分は床に落ちる覚悟を決めた。


「痛！」


「……くない」


柚の体は低反発のクッションにでも落ちたかのように、すっぽりと何かに包まれていた。
ほのかに花の匂いがする。


「大丈夫？」


「えっ？」


声のする上を見上げる。
スッとした高い鼻、黒ぶちめがねの奥の優しい二重の目。


「は、は、花畑先生！」


柚の体は花畑　蜜の両手でお姫さま抱っこされていた。