~ちょっとした気持ち~


「あ……あぁ……あぁ……」


ダメだ!そう思った。
思いっ切り伸ばした柚の両手は棚の上の大きなダンボール箱をしっかりと掴んでいる。
が、その足は回転椅子の上にある。
ゆっくり向きを変えてダンボール箱を机の上に降ろそうとしたのに、案の定、バランスを崩して椅子は回転し始めた。


「や……ばい!」


何とか持ち堪えようと両足に力を入れる。
が、クルッ。クルッ。と椅子は左右に回って柚の気持ちをもてあそぶ。
『どうする?手を離して身を守る?』
でも、そうすればダンボール箱は無残に床に叩きつけられることだろう。
中に入っているものを想像した。


「みんなの衣装……」


入っているのは前に使った発表会の浦島太郎の衣装。
落としたところで何もないだろう。
せいぜいダンボール箱がつぶれるくらい。
でも。