「やめて下さい!頭を上げて下さい!あの、もう分かりましたから」


無意識に柚はそう言っていた。
何も分かってはいない。
何も納得出来てはいない。
『一人だけ』が嫌いな園長が、何故、花畑 蜜だけ特別扱いするのか?
どこかの社長じゃあるまいし、どうして新人が重役出勤で構わないのか。
分からない。
納得出来ない。


「ほんと?分かってくれたのね。ありがとう!やっぱり柚先生だわ。あなたならやってくれるって思ってたの」


さっきの真剣な願いの顔はどこに行ったのだろう。
今、目の前にいる園長は超ご機嫌だ。
柚は何も言えず、ただ園長に抱きしめられている。


「じゃ、これからもよろしくお願いしますね」


サッと体を離すと柚の右肩をポンポンと叩いて、また園庭を見る。
柚は『は、はい』とだけ答えた。


「ね、歳の差って気にしなくていいと思うわよ」


「えっ?!」


慌てる柚の気配を感じて、園長は後ろを向いて園庭を見ながら笑った。