「おぉ!竹馬かぁ」


その声に小さな背中が一斉に振り返る。
パッと花が咲いたような笑顔がこちらを見る。
あぁ、何もいらない。この笑顔があればいい。
そう思える瞬間。


「あっ!みっちゃん先生!どこから来たの!?」


「向こうの、ずーっとずーっと、向こうの花畑からみんなに会いたくて走って来たんだ」


蓮はしゃがんで駆け寄る園児たちを両手で受け止める。
正面から来る子、後ろに回って背中から抱きつく子、蓮の周りは明るい声で溢れた。


「みっちゃん先生、どうして朝から来ないの?朝から来て欲しいよ」


「そうだよ。僕、男だから男の先生がいい!女は弱いから嫌だ!」


「あー!そんな事、言っていいの?柚先生に言ってやるから」


「ほらほら、ケンカしない。竹馬やってたんだろ?一緒にやろう」


最初の質問には答えず、蓮は園児たちと園庭で竹馬を始めた。
少し冷たい風が楽しそうな笑い声を包んで行く。
蓮にとって短いが、かけがえのない時間の始まり。