「一般論?ほんとに一般論?風人くん、子供いるんじゃないよね?」


絆の右手の包丁は、ゆっくりまな板の上に置かれた。
が、絆の目はまだ風人を疑っている。
さっきまでの様子といい、ずっと秘密にしていた事をカミングアウトしたとしてもおかしくはない。
人は本当の事を言う時に、『友達の話なんだけど』とか『一般論としてどう思う?』とか遠回しに聞く事がある。
そういう事なのか?と絆は疑っている。
パッと見、天然なくせに、こんな時には繊細に考える。


「いない!いないって!ほんとにいないって!信じて!」


この尋常じゃない焦りをどう考えればいいのか絆は黙り込む。
風人も話をどう繋ごうか思案している。



しばらくすると軽快にネギを刻む音が聞こえて来た。
フライパンに火を点ける音、ジューっと何かが焼ける音。
香ばしい匂いが風人の鼻をくすぐる。