「お疲れ」


無事に撮影が終わり、風人が蓮に声をかける。


「あっ、お疲れ」


蓮は答えるのももどかしいように、足早に立ち去ろうとする。


「何?次、仕事あるの?」


風人が蓮の後ろ姿に聞く。


「えっ?何で?」


急ぐ蓮の足が止まり、すごい勢いで振り返る。
その一連の蓮の動作に違和感を覚えながら、風人は蓮を見つめる。


「いやぁ、確かマネージャーから今日は二人共、この仕事だけだって聞いてたからさ。あっ、用事?たまには一緒にご飯食べに行こうかと思ったんたけど。こんなに早く仕事終わるなんて滅多にないしさ」


そう言って笑いながらも風人は蓮の表情の変化を見逃さない。
鼻が一瞬、ヒクヒクッと動いた。
これは蓮が隠し事をしている時。


「えーっと。用事!用事があるんだ。ごめん。また今度」


そう言って立ち去る姿は、まるで恋人にでも会いに行くかのように楽しそうだった。