それから、どのくらい経った頃か。

「よそ見するなよ」

 康孝が先頭で声を発した。

 顔を上げれば、みな注意深く足元だけを見て上っているのが見えた。

「かおり大丈夫?」

 私は後ろを振り返って、かおりの様子を伺う。

「へいき」

 かおりの頬を汗の玉が、つぅーと流れる。

 かおりに限らず、みんな言葉数が少なくなってきている。

 アキラの声なんてしばらく聞こえていない。

 私は必死に呼吸しながら、前に向き直った。

 そこで足が止まる。

「優子?」

 かおりが不審げに後ろから声をかけた。

「康孝さん!」

 私は前方を確認しながら進んでいく康孝に鋭い声を投げた。

「アキラがいないよ!」

 私の言葉に、びくっとなってみんなが辺りを見回した。