蜘蛛の巣がはった枝を、先頭が、ひょいと避けると、みんながそれに習う。

 道にはみ出した元気のいい木の枝先を、折らないように横へ押しやると、手を離した反動で跳ね返って後ろの人から不満の声が上がる。

 だいぶ登っているはずだ。

 振り返ってみると、歩いてきた登山道の至る所に、別の道が横切っているのが見える。

 獣道だ。

 間違って、足を進めてしまえば、たちまち戻ってこれなくなりそうだ。

 私ははぐれないよう前の背中を見て歩き続ける。


 ハァ  ハァ  ハァ


 息が切れる。

 普段使っていない筋肉はもうとっくに限界を超えている。

 しかし、木々の間から流れてくる冷たい空気が脳に染みて、すぐに目が覚める。

 まだ、やめれない。

 意思に反して、足が持ち上がらなくなってきて、段を踏み越えるたびにつま先がひっかかる。

 幅の違う石段がきつい。

 これで終わりかと、階段を上り終えても、またすぐ前方に階段が現れる。

 もう。

 何も考えられない。

 ただ歩くことだけに意識を集中する。