「ついた?」

「バカを言っちゃいけない。ここからやっと山登りが始まるんだ」

 永遠に続くかと思われた階段を上り終え、康孝を除く全員は息も絶え絶え、ひざに両手をついた。

「かおり、大丈夫?」

 私は隣のかおりに声をかける。

「平気。ちょっと太ももの筋肉が、ぱっつん、ぱっつん、だけど。まだ痛みはないわ。だいじょうぶ、まだ歩ける」

 その場にいた全員が、かおりの言葉に、はっとした。

 かおりは健康体じゃない。

 それでも、できる限りの力でこの旅に参加してるのだ。

 もう歩けないなんて、かおりの前では口に出すのが恥ずかしく思えた。

「いけるか?」

 康孝の言葉に、みんなが体勢を正した。

 整備された道はここまで。

 ここからはむき出しの土と、ごつごつした石の上を歩く。

 ふざけてなどいられない。

「出発」

 鬱蒼と木々が天井を覆う山道が、はじまった。