「なんだかねむくなってきた」

「さっき起きたばかりなのにおかしいね」

 目を開けていると、視界いっぱいに空がある。

 なんだか目を閉じるのがもったいないくらいだ。

「あしたはたくさん歩かないといけないし」

 旅に出た康孝さんからの突然の誘いで、明日はラベンダー荘の全員で長距離ウォーキングツアーに出ることになった。

「かおり、身体は大丈夫なの?」

「たぶんね。毎日リハビリで歩いてるから、20キロぐらいまでなら私もいけるかな」

 ラベンダー荘を卒業した後も、かおりは毎日頑張ってたんだ。

 自分のこともやりながら、こうやって私にもつきあってくれて。

「かおりは、すごいね」

 昼寝は得意なほうじゃないのに、なんだか無性にまぶたが重い。

「すごくないよ。私はやりたいことをしてるだけ」


「―――」


 答えなきゃと思うのに、もう何も話せないほど眠たい。

「こうやって、頭を大地につけてると、嫌なものが抜けていく気がするわよね。……優子?」


「―――」


「……寝ちゃった?」

 かおりはそっと、視線を優子からはずす。