「うわぁぁ、思ってたより広いね」

 私は丘の上から森林公園を見渡した。

 ラベンダー荘の庭とは比べ物にならないくらい広く、見渡す限りの斜面を黄緑色の芝生が覆っている。

 遊具の多い、この森林公園は休日なら家族連れで溢れるのだろうが、平日の午後は人もまばらで、遠くにちらほら人影が見える程度だ。

「優子、あそこにしよ」

 かおりが芝生の中ほどに一本だけ生えた大きな木を指差して、丘を降りていく。

 私もかおりの後を追う。

「はぁ、おなかすいたね」

「さっき起きたばかりだから、今日始めての食事ね」

 かおりと二人でレジャーシートをガサガサと広げる。

 四隅に脱いだ靴をポイポイ置いて、芝生の力で軽く浮いたレジャーシートに素足を乗せる。

 こんなに日差しは温かいのに、足の裏に伝わってきた大地の冷たさに、私はびっくりした。

 かおりと向かい合って座り、真ん中にお弁当を広げる。

「やだぁぁ、おにぎりに顔がついてる」

 私が作ったおにぎりを、かおりは手にとってニコニコ笑った。

「目は海苔を丸く切って、ホッペは鮭を少しつけたの」

「へぇー。いただきまーす」

 かおりがさっそく被りつく。