二人で麦茶を飲み干す。

「部屋まで案内するよ」

「分かるの?」

「空き部屋あと一つしかないから」

 青年は颯爽とキッチンを出ると廊下を通って階段を上がっていく。

「俺、部屋で仕事しててね、大概いるからなんかあったら言って。」

「ありがとう」

「ああ、いい忘れるとこだった。今日はいないけど、ここには俺をのぞいて、あと三人住んでるから。それと管理人なんだけど―――俺はまだ会ったことない。」

 二階に上がるとまっすぐ伸びた廊下を挟んで部屋が二つずつ向き合っていた。

「会った事がない?」

「あれ?これは噂にはなかった?」

 廊下の先の窓が少し開いていて、庭でかいだ甘い花の香りがここでも微かにしているような気がした。

「優子ちゃんの部屋は左の奥。荷物は?」

「もうすぐ届くと思う」

「そう、じゃこれが優子ちゃんの鍵」

 私は部屋の前に立つと渡された鍵で扉を開けた。

「俺は仕事に戻るよ。」

 青年はそういうと私の隣の部屋の扉を開け中に入った。

 私も自分の部屋に入り、カタンと戸を閉めた。

 畳の狭い部屋の中央に小さなテーブル。

 家具は少しずつそろえていくとして……

 窓辺の木枠には小さなサボテン。

 近づいてよく見ると、ツンツンの棘とホワホワの白い毛で覆われていた。

 まだ出会わぬ三人と管理人のことが頭をよぎる。


『探してみるといいよ。見つけたいものを』


 小山信也の言葉。

 うわさは本当なのだろうか。