私は次の瞬間、嫌な予感がして後ろを振り向いた。

 ラベンダー荘を見渡して、白いホワホワを探す。

 ―――いない。

 すぅーと頭から血の気が引いていく。

 ほんの少しの間、目を離しただけなのに。

 裏庭をのぞいてみるがどこにも見当たらない。

 ドクドクと大きく鳴り出す心臓。

 不安と戦いながらアイアンフェンスの入り口に向かう。

 扉はしっかり閉まっているが、下のほうを見るとウサギ一匹ぐらい十分通れそうな間隔が開いている。

 呼吸が苦しくなり吐き気がする。

 信也はあんなことを言っていたが、ウサギの飼育が嫌そうには見えなかったし、他人を拒絶するのが当たり前なアキラだってウサギを受け入れていた。

 そして、なんといっても、康孝さんが私たちに託したウサギなのに。

 私のせいだ、私のせいでみんなの大切なウサギがいなくなっちゃった。

 私は何も持たずラベンダー荘を飛び出した。