「え?一つ目の……謎?」

「違うよ、一つ目の答え。」

 康孝の瞳が、かおりの瞳と重なって見えた。

 かおりは現実を、美化せず、ありのまま受け入れて去っていった。

「見れば見るほど朝顔って人に似てるよね。」

 康孝が私から視線をはずした。

「ほら、これなんか蕾まで左回転だ―――」

 康孝は一番大きな蕾に触れた。

「―――黄緑色の蕾の間に、赤紫の花びらの色が、もうこんなに螺旋を描いて見えている。あれ?でもなんだか、これは、床屋の入り口でまわってるやつにそっくりだね。人よりもむしろそっちに似てるのか」

 信也のような言葉を、康孝は笑いながら言う。

「朝顔の花の寿命って一日なんですよね?」

 康孝は、よいしょっと立ち上がり、完成したラティスの朝顔を眺めた。

「そうだよ、ほぼ毎日違う蕾から花が咲くから、同じ流れの中で、永遠に続いて行われているものに感じてしまうけど、一つ一つよくみれば、同じ蔓から咲いた花でも色が違うし模様も違ったりするのが分かる。」

 康孝は朝顔に暗示をかけるように言う。

「きれいな花が咲いて欲しいね。信也の心がはっとするくらいの花が」