翌日、信也と私は、康孝の予言どおり、すっかり乾いたラティスを、前庭のよく日が当たるラベンダー荘の壁の前に固定した。

 白いペンキが鮮やかな新参者を、庭を飛び回っていた紋白蝶と紋黄蝶がひらひらと確かめに来る。

 隣の白いベンチではアキラが昼寝をしている。

 すっかりここが気に入ったらしく、昨日からほとんどの時間をここで過ごしているようだ。

 信也はさっそく、ラティスを刺したふかふかの土の上に、朝顔を植えていった。

 かおりがこの間まで使っていたスコップで小さな穴を掘り、鉢から抜いた苗を入れ、土をかぶせてしっかりと根を固定し、延びた蔓をラティスの網目に丁寧に絡ませていく。

「優子ちゃんは、人の身体が軽く螺旋を描いてるって知ってた?」

 信也の突拍子のない問いに、私は考えながら答える。

「身体の骨が背骨を中心にして、軽くねじれてるってこと?」

「そう。ほんの少しね。左に螺旋を描いてる。だから心臓が左寄りにあるように、左右対称じゃないのが当たり前なんだ」

 信也は朝顔の蔓を指先で、優しくもてあそぶ。

 そういえば最初に信也にあった時、理論物理学者だとか名乗っていた気がする。

「朝顔も人と同じ左まわりなんだよ」

 信也はゆっくりと、蔓を左回転させるように無理なく巻きつけていく。