「ずいぶん賑やかだな」
一斉に声のした方へ視線を投げる。
日に焼けた顔に逞しい身体、見たことがある大きなリュック。
「康孝さん」
最初に声を発したのは信也だった。
信也は嬉々として康孝の元へ駆け寄る。
「おいおい、ちょっと待ってくれ。それで抱きつくつもりか?」
康孝は深みのある声で、信也のペンキで汚れた身体を指差した。
「そう」
信也は躊躇なく抱擁した。
先ほどの言葉は冗談だったらしく、康孝は嫌な顔ひとつせずに、歳が少し離れた兄のようなそぶりでそれを受け止める。
「アキラも遠慮しなくていいんだぞ」
康孝は信也から離れると、私たちのほうへ近づいてくる。
アキラはギターを脇に置いたが、ベンチに座ったまま康孝を見上げた。
しばらく無言で見つめあう。
きっと私には分からないやりとりをしているのだろう。
「で?こちらが新しくラベンダー荘に入った子かな?」
康孝は最後に私のほうを向いた。
「彼女は二週間前にラベンダー荘の住人になった、渡辺優子さん。優子ちゃん、この人はあのはがきに写ってた例の旅人、康孝さん。」
「優子さんか、よろしく」
「よろしくおねがいします」
優しいまなざしを見つめながら、私は差し出された手を握り返した。
「例の、って?」
康孝の問いに、信也は続ける。
「雪山の写真のはがきだよ。送っただろ?」
「おお、そうか。じゃあ、君もかおりちゃんを見送ってくれたのかな?」
はい、と私が答えると康孝の表情は温かさを増し「ありがとう」と言った。
私はなんだか嬉しくなる。
「それで?かおりが居なくなった寂しさを癒すために、アキラのBGM聞きながらペンキなんか塗ってるわけか」
「そんなんじゃないよ」
信也が康孝に心を開いてるのが、すごく伝わってくる。
「朝顔に必要だったからってだけで」
「おっ朝顔か」
康孝は、そう言って何事か考えるような表情になったが、またすぐに戻って口を開く。
「なら、さっさと終わらせよう。今日は俺の歓迎会もあることだし、風も乾いてるから今日中に乾くだろう」
一斉に声のした方へ視線を投げる。
日に焼けた顔に逞しい身体、見たことがある大きなリュック。
「康孝さん」
最初に声を発したのは信也だった。
信也は嬉々として康孝の元へ駆け寄る。
「おいおい、ちょっと待ってくれ。それで抱きつくつもりか?」
康孝は深みのある声で、信也のペンキで汚れた身体を指差した。
「そう」
信也は躊躇なく抱擁した。
先ほどの言葉は冗談だったらしく、康孝は嫌な顔ひとつせずに、歳が少し離れた兄のようなそぶりでそれを受け止める。
「アキラも遠慮しなくていいんだぞ」
康孝は信也から離れると、私たちのほうへ近づいてくる。
アキラはギターを脇に置いたが、ベンチに座ったまま康孝を見上げた。
しばらく無言で見つめあう。
きっと私には分からないやりとりをしているのだろう。
「で?こちらが新しくラベンダー荘に入った子かな?」
康孝は最後に私のほうを向いた。
「彼女は二週間前にラベンダー荘の住人になった、渡辺優子さん。優子ちゃん、この人はあのはがきに写ってた例の旅人、康孝さん。」
「優子さんか、よろしく」
「よろしくおねがいします」
優しいまなざしを見つめながら、私は差し出された手を握り返した。
「例の、って?」
康孝の問いに、信也は続ける。
「雪山の写真のはがきだよ。送っただろ?」
「おお、そうか。じゃあ、君もかおりちゃんを見送ってくれたのかな?」
はい、と私が答えると康孝の表情は温かさを増し「ありがとう」と言った。
私はなんだか嬉しくなる。
「それで?かおりが居なくなった寂しさを癒すために、アキラのBGM聞きながらペンキなんか塗ってるわけか」
「そんなんじゃないよ」
信也が康孝に心を開いてるのが、すごく伝わってくる。
「朝顔に必要だったからってだけで」
「おっ朝顔か」
康孝は、そう言って何事か考えるような表情になったが、またすぐに戻って口を開く。
「なら、さっさと終わらせよう。今日は俺の歓迎会もあることだし、風も乾いてるから今日中に乾くだろう」