「――ううっ…くっ…」

「――園美?」

聞き覚えのあるその声に私は視線を向けた。

違う。

何かの間違いだ。

合鍵はすでに返してもらったから、上川はもうこの家に入れないはずだ。

でも、
「部長、ですか?」

私がそう言ったのと同時に、それまで暗くなったキッチンが明るくなった。

灯りがついたからだ。

私の目の前に立っているのは、モヤモヤの原因である上川だ。

「――何で、ここにいるんですか?」

鼻声で聞いた私に、
「園美こそ、どうして泣いてるの?」

上川が聞き返してきた。