「家まで近いっつったって
危ねーもんは危ねーんだよ。
いーか、相手は男でお前は女なんだぞ。力では絶対に勝てねーの。そこんとこ自覚しとけよ」
 
「わかってるよぉ、いざとなったら走って逃げるから」
 
「何かあればすぐ電話しろよ」
 
「うん」
 
相変わらず恵介は心配性だな…
 
「…アイツはお前のバイトに関して何も言わねーの?」
 
恵介が言う『アイツ』は敦郎先輩で『あのヤロー』は桜井先輩のこと
 
海に行ってから決して名前では
呼ばずそう呼ぶようになった
 
「終わるのが遅いからシフト変えてもらえるならそうして欲しいって。無理なら送るって言ってくれたんだけど、先輩もバイトあるし受験勉強もあるからね。あたしが断ってるの」
 
「なら俺が迎えに行ってやろーか」
 
「は?」
 
「バイト終わる時間に迎えに行ってやろーかって言ってんの」