大事なのは、自分の気持ちと彼がそれを知っていてくれること。
私の、気持ちは。
ずっと苦手だった、悪魔のような人。口が悪くて、すぐ怒って、顔も怖い。だけど時々優しくて、抱きしめる腕は力強い。
お酒に弱くて、乗り物に乗るとすぐ寝ちゃって、だけどそんなところも可愛くて。
私が傷つかないように、泣かないように想ってくれる。
そんな彼のことが好き。
好き、好きだよ。
周りにどう思われたっていい。その気持ちを、彼に知っていてほしい。
「っ……よし!」
心のモヤが晴れた気がする。すっきりとした気持ちで両頬をパンッと叩いた私に、菜穂ちゃんはふっと笑う。
「ありがと、菜穂ちゃん!なんかすっきりした!」
「ならよかったですぅ。じゃ、相談料としてレモンティー買ってきてくださぁい」
「って、えぇ!?相談料!?」
「タダで話聞くなんて言ってませんよぉ〜。あ、社食のところの自販機にあるレモンティーがいいで〜す」
まぁ、話は聞いてもらったわけだし……。仕方なく私は席を立ち、レモンティーを買いに行くべくフロアを出る。