「なんでっ、なんでっ、信じてくれないのっ!!」

そう言って、ひとりの少女ー『神奈月ゆず』は、家を飛び出した。
靴も履かないまま、裸足で地べたを踏む。

「お父さんなんてっ、大っ嫌い‼︎」

人通りの少ない歩道橋。
車の通行も少なく、ゆずを見ている人はいなかった。

歩道橋から発散された声は、やがて雲に掻き消される

「わたしの言ったこと、いつも信じてくれない…!あんな科学者っ…‼︎」

ゆずの父は、科学者だ。
世界的ウイルス、細胞、未知の存在を調べる科学者。

「いつもいつもっ…!!」

ゆずは科学者の父を見習い、いつも細胞研究や、未知の存在を調べたりしている。
そして今日、ゆずは自分の細胞の中に可笑しな細胞を発見した。
核や葉緑体、細胞壁や赤血球、それらとはまったく異なる新たな細胞を。
それを父に確かめてほしく、それを伝えた。
だが、信じてもらえなく、しまいには「研究もいいが、他の勉強をしなさい」と怒られてしまったのだ。

「あの細胞は、きっとわたしにしか無い細胞…。解剖すれば、ノーベル賞も夢じゃないのに…!!」

そうだ!とゆずは思う。
父がダメなら、父の友達に頼もう。
よし。急がなきゃ。

雨に濡れた歩道橋を走る。

「きゃっ____!」

階段を一気に駆け下りたとき、雨に濡れたせいで、足が滑った。

そして。

視界に光満ちた