最後はまたお互いをわからないまま、死なないことを約束させられてうやむやに電話が切られた。携帯を握ったまま、話していたベッドにパタンと仰向けになった。天井を眺めた。

 わからないんだ、全ては終わらないことを。
 だが、なぜわからないのかわからない。自明のことと思っていたことがまったく理解されない。しかし、通じるようにも伝えられない。最初からそうだったから、と言うしかないのだろうか?

 いや、違う。そもそも僕は、淋しいという気持ちを理解しているんだろうか? 逢えなくて淋しい、身体がなくなるから淋しい…僕はこれらをいままであまり考えたことがないんだと気づいた。手がかりが無いので、僕はとりあえず辞書を開いた。そして“淋しさ”という言葉を調べてみた。それを見て僕はあることを思い出した。自分が小島さんの気持ちを少しだけわかっていたかも知れないことに。辞書にはこう書いてあった。

『孤独や見捨てられることから生じる悲しみ』

 それはあの日の、異国の地で母国の言葉で話しかけてくれた人が、もう僕を助けてくれないと知った時の、あのわけのわからない悲しみのことかも知れない。そうか、僕は見捨てられたみたいになって独りぼっちだと感じたんだ。死の国では感じたことのない悲しみを。あの時わけもわからず僕は泣いた。泣くことをしない僕が泣いた。泣くのは2度めだった。そうしたら1度目のあれも、孤独だったのだろうか。

 生に関わるとこんな風に、孤独を淋しさを知るのだろうか。
 あんな悲しい思いをするのかと、僕は小島さんの言葉を改めて思った。