「じゃあさ、冬休み終わる前に行っても良い?」
「え、どこにですか」

 話題がいきなり変わった。

「君んとこに決まってるじゃん」
「ええっ……ここに来るんですか?」
「他にどこに行くんだよ! 調査は早めに始めたほうが良いでしょ?」
「僕じゃないですよ」
「すっごくすっごく会いたいけど、君が本命じゃないよ? 調査対象は幸村さんだよぉ」
「ええっ? 幸村さん調べた所で無意味でしょ!?」
「いや、彼が君んちのこと調べてるよ、きっと。そういう人でしょ? 彼。それ聞いてからこっちの調査するわ」
「え…そんなことあります?」
「私のことももう調べてるんじゃないかな。根掘り葉掘り訊いてきたんでしょ? ピロートークだけで済むわけないじゃない。うちのバカ、松田君、私、君んちの両親……君の周辺情報なんか警察権限で調べられることは全部やってると思うよ、その人」

 そんなこと思いもしなかったが、それを聞いているうちに幸村さんが焼損屍体のときに僕の家で張り込みしてたことを思い出した。さっきの鳥肌が再燃する。佳彦……今も未成年の首を絞めて強姦してるんだろうか? 佳彦のWEB本屋も……そうしたら芋づる式に清水センセの大学生時代のバイトことがバレてしまう可能性すらある。児童ポルノ法の時効は何年だろう? そしたら僕のリベンジポルノ動画が幸村さんに見られるようなことになったとしたら……幸村さんから寺岡さん、そして小島さんがそれを知ることになったら……コレに関しては寺岡さんにも言えない。こうなったらアレを清水センセに処分してもらわないと。そうすれば少しはこの件についての鳥肌が治まると思われた。

「それでね、君の実のお父さんの例の件、検視とか捜査されてるといいなって思ってる」
「まさか……」
「少なくとも不審死でしょ? どうなの、法医学者先生」
「まぁ……自殺は異状死体ですけど」
「検視はされてるよね?」
「ええ。それはほぼ間違いないです、自殺なら、ですが」
「そっか。自殺かどうか、まだ確定もしてないのか」
「ええ、僕がそう感じてるだけですから」
「そうなると縊死かどうかなんて二の次だね」
「ええ、そんなのは都合の良い僕の妄想で、実は単なる病死や事故死かも知れませんので……僕は自殺だって確信してますけど」
「でね、それくらいのことは君のことが大好きな幸村警部補は気がついてて、もう調べてると思うんだよね。彼、情報提供してくれると良いな。私の手腕や人脈をアピールして仲間になんないとね、始まんない。でもきっと彼、私に会って話聞きたいって思ってるね。確信できる! 会えたらもうこっちのもんよ」
「……確かに」
「電話でも良いって思うけど、でも……顔が見たいんだよねぇ! それ以上に裕に会いたいんだよ!!」