「高校の頃は、気に入らない低能教師をこっそり懲戒処分にするとか。大学の時とかは害悪垂れ流してるぼんぼんのクソ学生をハメて小遣い搾り取ったりとか、ね」
「義賊ってやつですか。悪魔じゃないし」
「うんうん、好意的な捉え方良いねぇ! でもね、面白がるためにしちゃいけないんだよ、こういうことはね。相手がどんなにサイテーなクズ野郎でもさ、正義を盾にして退屈を紛らわすとか、自分の能力を試すだけのために悪人をハメるとかさ。刀の切れ味を試したくてウズウズして闇夜に人が通るのを待ってる辻斬りの気持ちだよ。もちろん今はもうしないよ。でもやろうと思えば出来ちゃう。天才だからね。だからさ、この頭脳をこれみよがしにひけらかすためには社会のために役立てようって建前で学問の道を選んだわけだし。さあ、そんな同じ悪魔同志、しかも他でもない君のためなら、ひと肌でもふた肌でも脱ぐよ、私の裸は隆と裕君にしか見せませんけどね!」
「すみません」
「それにね、君は自分が崩壊しないように、そうやってなんとか自分を守ろうって思ったんだよ。それが歪であろうが、あまり効果のない手だろうが、君は君の人生の亀裂と戦ってた。それがどれだけ残酷だったとしても君の価値観や倫理感の中では最善の手だったんだ……悪魔だとか言われる前に、君にとって君は健気なんだよ」
「はぁ……」

 健気と言われても、否定も肯定も出来なくなるだけで、僕はモヤモヤしながら曖昧な相槌だけ打った。

「でさ、そんな元悪魔なんで、どんな手を使っても良い?」
「どんなって?」
「お母様からその情報引き出すのに、さ。例えば、幸村さんを借りるとか」
「え」
「幸村さん会ってみたいなぁ。作戦とか抜きにしても」
「……会うんですか」
「どんな人か見てみたいじゃん! 君から死神を取り除いた逸材だよ? きっと気が合うと思うんだよねぇ。ねぇ、イケメン? 私のタイプかなぁ」

 寺岡さんの物見高さが炸裂している。隆が聞いたら嫉妬でグーで殴り倒されるだろう。