「ほんと裕君久しぶりだねぇ! なんで電話くれたの?」
「わかりませんか」
「……もしかして、ピンチ?」
「はい」
「やだな、気味悪いくらい素直で……本当にヤバいんじゃない? なに? 何関係がどうしちゃったの?」

 やはり寺岡さんはその一言で察したようだった。そして僕が話しやすいような問いを投げかけてくれた。小さい裕の言う通り、寺岡さんはいつも通り親切だった。

「えっと……いろいろありまして、例の発作がなくなりました」
「えっ!? どういうこと?」
「懸案の、自殺屍体見ると出るアレが、無くなりまして」
「ほんとに……? どうやって? まさか自分のモノ切っちゃったとかじゃないよね? ね?」
「それはくっついてます、まだ」
「タマも無事?」
「そういうんじゃないです。メスとか薬とか使ってないので、安心して下さい」
「ええええええーっ!!!!! マジか!!! 裕君! おめでとう! 良かったね!!! ほんと良かった……」

 なぜか寺岡さんの声が詰まった。泣いているみたいな気がした。

「ありがとうございます」
「それなのに、ピンチ?」
「ええ」
「もしかして、発作が無くなったら解剖で自殺屍体が鑑別できなくなったとか?」
「いえ、それは大丈夫です」
「初めて死姦しちゃったとか?」
「死姦はしません」
「発作がなくなったら逆に虚しくなっちゃったとか?」
「それはないです」
「うーん、わかんないや。なにが起きたの?」
「えっと……そのあとすぐに、死神でも無くなりまして」
「いや……どうしたの……? 裕君、大丈夫?」

 寺岡さんはふざけ損ねたのか、幽霊でも出たようなゾッとしてる声で僕に訊いてきた。