ダメだ。違うことを考えなければ。死ぬこと、清水センセのこと、殺されること、以外のこと。死ぬこと、清水センセのこと、殺されること、以外のこと。死ぬこと、清水センセのこと、殺されること、以外のこと死ぬこと清水センセのこと殺されること清水センセのこと殺されること清水センセのこと殺されること清水センセのこと殺されること清水センセのこと殺されること清水センセのこと殺されるこ

(なんでぼくのいったことかんがえてくれないの?)

 そのとき小さい裕の声がポンとポップアップみたいに僕の頭の中に響いた。

(ずっとずっとまってたんだよ? またぼくをとじこめるの? もうやだよ)
(ごめん。閉じ込めてたんだね)
(ゆきむらさんのほうがやさしいよ。ぼくのことわかってくれたよ)
(そうだね。僕は何も見たくなかったから)
(それでてらおかさんのうちでぼくはまたとじこめられたんだ)
(そうか、そこで僕はきみのこと、閉じ込めたのか)
(てらおかさんもやさしかったね。ぼくのいうこと、ちゃんときいてくれた)

 父の自死がわかった日が懐かしく思い出される。本当だ。幸村さんも寺岡さんも僕よりずっと小さい裕に親切だった。

(だから、はやくおとうさんとおかあさんのことおしえてよ。ずっとまってるんだよ? なんでおしえてくれないの?)
(どうやってお母さんに聞いたらいいかわからないんだ。自分が養子だったこと絶対言わないように、お墓まで持って行こうって思ってたのに)
(なんで? あのおんなのひとははなしたいかもしれないよ?)

 小さい裕は、育ての母を“あのおんなのひと”と言った。

(話したい? なんで? 僕に秘密にしてるんでしょ? だから特別養子になったんじゃないの?)
(だってもうおおきいもん。おとなどうしだよ。おとななんだからぼくにいろいろおしえてくれたらいいのに)

 それももっともだった。だが、どんな理由で母に語らせられるのかがまったくわからなかった。

(てらおかさんはあのおんなのひととなかいいよ。てらおかさんがおはなししてくれるよ)

 ああ。どっかで思いついてはいたが、絶対したくなかったことを見逃すこと無く小さい裕は推してきた。わかってる。寺岡さんなら一も二もなくこんな血沸き肉踊る話を取り逃がすわけがないし、この無理難題も鮮やかにセッティングしてみせることを。

(ほんと、嫌なこと言うなぁ)
(いちばんはやいよ。てらおかさんはたいくつしてるからすぐしてくれるんだよ)

 小さい裕は的確過ぎて気持ち悪くなるようなことを言った。その頃にはいつの間にか殺されることも清水センセも頭の中から消えていた。